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ちょっとカンガルーがいるかいないか確かめてくる。
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寝込み襲う貴族
こないだのパラレルの後半ですー

なんかすげーお耽美な感じになってしもた…
まあ貴族だしいっか。


10秒、それとも1分

どれくらいの時間そうしていたのかはわからない。
ただ触れるだけの、子供がするような口づけ。
甘くて、甘くて。
ゆっくりと人を死に誘う毒薬は甘い、と昔聞いたのを思い出した。


くちびるを離して、ひと心地つく。ひそやかな満足と微かな背徳。
眼を閉じて、呼吸を整え、そしてゆっくりと再び眼を開けた。

さっきまで堅く閉じられていたまぶたが開いて
みどり色の双眸に射抜かれた。











「なぁ、なんでキスしたん?」

身が竦む。
柔らかい響きとは裏腹に、痛いほど実直な疑問。
心臓が早鐘のように鳴り、頬が、耳が赤く染まってゆくのを自分でも感じた。

「なぁ、なんで?」

「…それは」

答えなど言えるはずがない。
魔がさした、と陳腐な言葉で濁したところでそれは真実ではなく、
かといって真実を告げればすべてが終わる。
私は男で、彼もまた男なのだ。これが恋愛感情であるはずがない。

それなのに

「俺のこと、好きなん?」

彼はさも簡単に垣根を越える。
ひらり、ひらり、とまるで曲芸師のようだ。
ずっと私が囚われていたことも、他愛のない不具合のように。
自分がどんな表情をしているのかわからない。
怯えているのか、困惑しているのか。

「それは…」

「違うん?」

是と答えても否と答えても、正解のない質問。
なのに、彼は執拗に答えを求める。

「なぁ、どっち?」

くらくらする。
なのに頭の中は奇妙に澄み渡り、想いは胸を突く。
形にならない言葉は出口を見失って、ぽたりと小さな滴になって滑り落ちた。

「…泣くことないやん」

それじゃ俺が悪いみたいやわ。
寝込みを襲われたのは俺の方なのに。

嘯きながら、手を伸ばす。
彼の冷たい指が頬に触れ、我知らず溢れてくる涙を拭った。
喉が焼けそうに熱くて、しゃくりあげることもできない。

「…好き、です」

やっとの思いで紡いだ言葉。
言いたくて、言えなかった、背徳への鍵。
口にすれば形になり、もう二度と戻れない。
涙は次から次へと溜まっては零れ落ちて、彼の頬をも濡らしてゆく。


「知ってる」


ふわりと瞳だけで微笑んで、腕が首に絡みつく。
引き寄せられてバランスを崩した私は、体重を保てずになだれ込む。
近づく熱、声、そして鼓動。
すべてを包む暖かい腕の中で、額に、頬に、くちびるにキスの雨が降る。


「こんなことが、許されるはずがありません」


神が、許すはずがない。

そう思いながら、腕を振りほどくことも、くちびるを離すこともできないでいる自分は、
なんて浅ましい生き物なのだろう。
求められるままにくちびるを開き、さらに、その奥へ、奥へと。
息をするのも忘れてお互いを貪る。


「心配せんでえぇよ」


皆寝てて誰も見てへんし、
それに


悪戯っぽく微笑む。






「神様もシエスタ中や」


耳元で響く甘い声に眩暈がした。
きっと、もう、どこにも逃げられない。

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